2015年11月18日
綺麗になくなってる

え・・・?これ・・・なに?
「勝手に決めるな!」
そう叫んで道明寺の会社を飛び出した二時間後、すぐに家に戻る気にもなれずに遠回りしてようやく戻る。
帰ってきた娘に両親は驚いた顔でお帰りの言葉もなかった。
その怪訝な顔に気にも止めずに落ち着かないままに自分の部屋のドアを開けて目を見開いたまま力が抜けてポトリと手に持っていた
鞄を畳の上に落としてしまった。
古びた小学校から愛用の勉強机・・・
たくさん並んでるはずの教科書に参考書に六法書が綺麗になくなってる。
まさか生活苦で売れるものはすべて売ったとか?
私の私物であふれていたはずの部屋は軽くなってる気がする。
「なんで、おねぇちゃんがいるの?」
私の後ろに立つ進の気配。
振りかえった私が見たのは両手いっぱいに漫画を持って立つ進。
「今日からこの部屋は僕がもらうから」
にっこりとご機數學M2
嫌な笑みを進が私に向ける。
「ごんっ」
割といい音が響いた進の頭。
「なにすんだよ」
頭を押さえて座りこむ進に「100万年早い」と言葉を投げ捨てた。
「おねぇちゃんどうせこの家から出るんだろ」
ジンワリと涙をためた瞳が私を見上げる。
「もしかして・・・私の荷物って・・・?」
「道明寺さんの使いだっていって引っ越し業者が来てつくしの荷物は全部運びだしたわよ」
「なにそれ?」
道明寺のやつ先手を打つにしても早すぎだよ。
早く帰ってこなかった自分に腹が立つ。
「どうして、勝手に運ばせたのよ」
「だって、道明寺さんだぞ」と「だって道明寺さんよ」のパパとママの声が重なる。
「つくしが大学を卒業すれば結婚するんだし、パパたちは反対する理由なんてない」
「理由あるでしょ!嫁入り前の娘だよ」
「外泊してるのに?」
え・・・っ?
まっすぐに娘を見つめる親の真顔。
非難するわけでもないきょとんとした当たり前の表情で親に外泊を言われるのも気恥ずかしい。
「ほら、一緒に暮らしてみてわかることっていうのもあるから。
物は試しに一緒に住むのも悪くないってママは思うのよ。いやなら帰ってくればいいんだし」
「つくし・・・」
ギュッとママが私の両手を掴む。
「どんなことがあっても結婚は我慢だから!
道明寺さんを逃がしちゃだめ」
いやなら帰ってくればいいのって言ってなかった?
その言葉はどうなった?
「玉の輿~♪」
パパとママと進が浮かれてる。
コタツの周りを扇子を振りながら跳ねてる感じに盛りあがってる。
「あっ!これ新居の住所」
ママが思いだしたように私にメモを渡す。
「絶対帰ってくるから進は私の部屋を使うな!」
私の声は無視するように宴が続いてる。
もう!うちの家族はなぜこんなに道明寺にすぐ介入されるのッ!
情けなくなるよ。
道明寺のやつ!
怒りのままに玄関のドアを開いて思いきり閉めて駆けだした。